患者とともにがんと闘う専門医


月刊『医歯薬進学』(2007年3月10日発行)

東京・荻窪駅から徒歩2分程のマンションの一室に「がん総合相談センター]はある。ここの所長を務める松江寛人医師は、千葉大学医学部を卒業後38年間、国立がんセンターで放射線の専門医として、さまざまながんの患者さんと接してきた。

2001年7月、国立がんセンター病院放射線診断部医長を最後に退職し、医療の現場から眼を外に向けたとき、がん医療への不振と絶望から行き場を失ってしまった人たちがたくさん存在するという事実を知り、松江医師は大きな衝撃を受けた。

これは、がん治療において、がんという病気(病巣)のみを追うあまり「人間を見失ったままの治療]が長い間続けられているためで、医療者の側にその責任の大半があるのではないか、松江医師は自責の念に駆られたという。

がんで悩み、苦しみ、救いを求めている人たちを見るにつけ、こうした人たちのために少しでも役に立てればという思いから、2001年8月、がん相談を専門にするクリニック「がん総合相談センター]を開設した。このような試みは日本で初めてのことだった。

いまやがんの告知は当たり前になってきている。だから自分ががんであることを知らない患者さんは少なくなってきた。しかし、告知はされたものの、がんの病状や治療について理解や納得ができず、病気の先行きに不安を感じている患者さんやその家族も多い。

  • がんと診断されたが…間違いないのだろうか?
  • 医者から病状を説明されたが…本当はどうなのだろうか?
  • 詳しい説明が行われないまま治療といわれたが…このままでいいのだろうか?
  • すでに治療が行われているが…ほかに選択肢はないのだろうか?
  • 以前に手術をしたのだが…再発の怖れはないのだろうか?
  • 末期なので治療法がないといわれたが…今後どうすればいいのか?
  • がんについて聞きたいことがたくさんあるのだが…。

このような患者さんの声は、医療の世界に長年根づいている“医者上位”の体質が生み出した“患者不在”の医療によってもたらされたものといってよく、そのことが現在の医療不信の温床となっている。

これらの悩みについて、がんの専門医である松江医師が直接面談して、病状や治療法について詳しく話を聞き、長年の専門医として診療にあたってきた自らの経験と知識をもとに、総合的に判断して、相談者個々に応じた対応策の手助けをしている。

がんの診断や治療について、最近セカンドオピニオン(もう一人の医師に意見を聞く)を求める声が患者さん側から高まってきた。「診断は正しいのか」「治療法はベストなのか」などの疑問を、他の医師に直接聞いてみたいという患者さんが増えている。

がんと告知されても納得出来ない場合には、他の医師の意見を求め、十分に納得した上で治療を受けるのは当然のことである。

しかし、「“医者上位”という日本の医療風土にはなじみにくいセカンド・オピニオンですから、“どの専門医に、何を求めたらよいかわからない方がたくさんおられます。そうした人たちに助言することも当センターの大切な仕事のうちです」と、松江医師はいう。

「がん総合相談センター」は、がんの悩みを持つすべての人を対象に、“じっくり時間をかけながら面談し、あらゆる相談を受けつけている。がんで悩み、苦しむ人にとって、心強いクリニックである。

(写真=本誌・丹 弘)

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